規格と不純物 / 06

電解液溶媒の不純物:発生源と影響

水分、有機成分、酸性物質、無機不純物、粒子の発生源と考えられる影響を整理し、各分析方法で何が分かるかを説明します。

クロマトグラフィー分析装置と試料ラックのイメージ

電解液溶媒でよく管理対象となる不純物には、水分、有機不純物、酸性成分、無機不純物、粒子、不揮発性物質があります。製造原料とともに入る場合も、包装、設備、使用過程に由来する場合もあります。ある成分を不純物と判断するには、単一溶媒製品中か、最終電解液中かを先に区別します。原料中では管理すべき他成分でも、配合では意図して加える共溶媒となる場合があります。

水分:製造後にも再び入り込む可能性

水は原料とともに入るほか、空気や乾燥していない容器・配管に由来する場合があります。溶媒中に溶けるため、目に見える水滴を作るとは限りません。六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)など、水に敏感な成分を含む電解液では、微量水分が分解や酸性副生成物の形成に関与する可能性があります。

そのため、水分は通常、個別に測定します。外観が透明で主成分純度が高くても、水分が用途の要求を満たすとは限りません。

有機不純物:製造経路と物質の接触に関係する

有機不純物の種類は製造経路に関係します。アルコールを用いるエステル交換系では、未反応アルコール、関連炭酸エステル、ジオールが残る可能性があり、環状炭酸エステルの精製でもジオール管理が関わる場合があります。表は各工程で着目し得る不純物を示します。具体的な項目と含有量は製品規格・分析結果から判断するもので、Lixingの実際の製造経路や各ロットの検出一覧ではありません。

溶媒製品着目し得る成分考えられる由来影響・分析上の着目点
炭酸ジメチル(DMC)メタノール、エチレングリコールまたはプロピレングリコール環状炭酸エステルとメタノールのエステル交換経路における原料・併産物の残留アルコールとジオールを個別に定量し、主成分ピーク面積で代用しない
炭酸ジエチル(DEC)エタノール、残留環状炭酸エステル、ジオールエタノールによるエステル交換と後段の分離残留反応物とDECを区別し、方法の分離能力を確認
炭酸エチルメチル(EMC)メタノール、エタノール、DMCまたはDECメタノール/エタノールと炭酸エステルが関わる平衡反応・分離アルコール残留と関連炭酸エステルによる組成ずれを分けて評価
炭酸エチレン(EC)エチレングリコール、ジエチレングリコール環状炭酸エステルの製造・精製におけるジオール残留ジオール分析の対象範囲と残留量を確認
炭酸プロピレン(PC)プロピレングリコール環状炭酸エステルの製造・精製におけるジオール残留プロピレングリコールをPC主成分と分けて同定・定量

例えば、DMCは最終電解液に意図して加える共溶媒である一方、EMC原料中では個別に管理すべき関連成分になります。EMC原料として投入する際に含有DMCを無視すると、実際の配合比は計算値からずれます。これは組成のずれの問題です。水やアルコールなどが望ましくない反応を起こすかどうかは別の化学的影響であり、混同してはいけません。

分析装置のそばに置かれた試料ラックとサンプリング器具のイメージ

酸性物質:酸度は特定の酸の含有量とは限らない

酸性物質は原料の残留、劣化、加水分解に関係する場合があり、腐食、界面、保存安定性に影響する可能性があります。酸度測定は指定の方法で酸性成分を反映するもので、酸度の数値を無条件に特定の酸の含有量と解釈することはできません。

特に、塩を加えていない溶媒と、調製済みの電解液を区別する必要があります。LiPF6を含む系のフッ化水素リスクを根拠に、すべての純炭酸エステル原料にフッ化水素が含まれると断定することはできません。

無機不純物、粒子、不揮発性物質

金属元素やイオン性残留物は、原料、工程で使用する物質、設備との接触に由来する場合があります。その影響は種類、含有量、化学形態によって異なります。元素の総含有量を測定しても、その元素がどの化合物として存在するかまで分かるわけではありません。

粒子は外部、容器、設備の摩耗に由来する場合があります。不揮発性物質は、規定の分析条件で残る残留物です。両者は同じではありません。目に見えない溶解性残留物も、溶媒が揮発した後に残る場合があります。これらは表面清浄度、ろ過、その後の使用に影響する可能性があります。

複数の分析方法を組み合わせる理由

ガスクロマトグラフィー(GC)は多くの有機成分の分離・測定に使われ、水分にはカールフィッシャー法がよく用いられます。元素、イオン、粒子には、それぞれに対応した分析が必要です。これらの結果を組み合わせることで、異なる種類の不純物を把握できます。

分析結果は、試料情報と方法の対象範囲を合わせて読みます。「不検出」は通常、その方法の検出能力を下回ることを示します。検出された成分が使用に影響するかは、その含有量と対象系の感受性にも依存します。

例えばGC法では、メタノールと隣接ピークの分離および校正を確認したうえで、メタノール含有量を測定できます。未知ピークには追加の同定が必要で、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)は構造の手掛かりを提供します。ジオール、金属などの項目も、各方法の適用範囲を確認する必要があり、DMCとEMCを検出できたことだけですべての不純物を測定できるとは判断できません。

参考資料

表の出典:DMC、DEC、EMCの候補成分は、特許US20110313185A1に記載されたアルコールと炭酸エステルの反応・分離系を参照しています。EC、PCは特許US5922888Aのジオール不純物の説明を参照し、ECにはエチレングリコールとジエチレングリコールが含まれます。

Agilent:電池電解液中の炭酸エステル溶媒および添加剤のGC/MSD分析(5991-9356EN)

Metrohm:電池材料の水分測定と分析方法

公開特許US20110313185A1:エステル交換経路の反応物、生成物、分離の課題

公開特許US5922888A:EC、PC中のジオール不純物と精製に関する研究